今回は、「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」の要約とレビューです。
マーケティングの汎用的かつ基本的な考え方が、P&G、USJで成功を収めたマーケターである著者によって解説されています。
マーケティングの基礎を学びたい人、改めて学びたいという人におすすめです!
USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門の要約
USJの成功の秘密はマーケティングにある
経営危機に陥っていたUSJが、2015年には3倍の商圏人口に陣取る東京ディズニーランドを越え、単月で集客数日本一のテーマパークに。
その秘密は、USJがマーケティングを重視する企業になったこと。
マーケターは企業の進むべき道を定めるために、ビジネスドライバーを見つけ、どう戦うかの前にどこで戦うかを見極めることが必要。
USJの例では、「映画ファンだけ」のパークと客層を絞り過ぎていたのを、広げた。
また、TVCMの質、チケット価格の値上げの3点に注力。
※価格弾力性・・・1%の値動きに対して売上がどれくらい変動するか
究極的に変えた事は、消費者視点の価値観を植えた事。
つまり、会社側のどんな事情や善意も消費者価値に繋がらなければ意味が無いと意思決定出来ると言うこと。
なぜなら、マーケターとは消費者理解の専門家だから。
皆んなの意見の妥協案的な落とし所は、ほとんどが消費者視最適では無い。例えばカレーが良いという人、すき焼きが良い人がいればカレーすき焼きになってしまう。
これを避けるためにマーケターがまとめる必要がある。
マーケティングの本質とは
そもそもマーケティングとは、商品が売れるための仕組みを作る事、つまり顧客に選ばれる必然を作るということ。
これは消費者と商品の接点を制することが必要で、具体的な接点(ビジネスドライバー)は以下の3点。
・消費者の頭の中を制する
認知率‥消費者がブランドを知っている割合。一般的に高いほど売上も上がる。
ブランドエクイティ‥ブランドに対するイメージ。競争に有利になるように築くことで売上が上がる。(=ブランディング)
・店頭(買う場所)を制する
配荷率‥消費者が買える場所にどれだけ展開されているか。流通業者に選ばれる必然を作る必要がある。
山積(display)‥棚の外でリマインドする。
価格‥中間業者がいるため、狙った価格になるように調整する必要がある。USJの場合ダフ屋がいたためコントロールが難しかった。
・商品の使用体験を制する
リピート率を増やすことで売上に繋がるため、商品の使用体験を最大化することでリピート率も上がる。
つまり商品のR&Dにおいて消費者が喜ぶものをちゃんと作らせることが大切。
以下の流れにビジネスドライバーは整理できる。
Awareness(%) | 認知率 |
Distribution(%) | 店頭での配荷率 |
Display(%) | 店頭での山積率 |
Trial(%) | 購入率 |
Repeat(%) | 際購入率 |
Pricing | 平均価格 |
Purchase Frequency | 購入頻度 |
目標の売上を上げるために、それぞれの数値がどれくらいであれば良いのかを考えることで目標の各数値が算出できる。
戦略とは
戦略の定義‥戦略とは、目的を達成するために資源(リソース)を配分する「選択」のこと。
目的‥達成したいこと。
資源‥経営資源、つまりお金や人員など。経営資源は「ヒト、モノ、金、情報、時間、知的財産」に分類される。
やることを選ぶということは同時にやらないことを選ぶということである。これが戦略の核となる「選択と集中」
目的と目標の違い‥目的は達成すべき使命、目標はその目的を達成するために経営資源を投入する具体的な的のこと。「目的はパリ占領、目標はフランス軍」
戦略と戦術の違い‥戦略は目的達成のための資源分配、戦術は戦略を実行するための具体的なプランのこと。
重要なことは目的→目標→戦略→戦術の順に考えること。
嫁さんと仲直りしたいという目的を例にすると、
- 目標=嫁さん
- 戦略=弱点の甘いものから攻める
- 戦術=土産に豪華なロールケーキを買う
マーケティングに当てはめると、
- 目的=Objective
- 目標=Who(ターゲットは誰か)
- 戦略=What(何を売るか)
- 戦術=How(どうやって売るか)
戦略の良し悪しのチェックには、戦略の4Sのフレームワークを活用する
・Selective(選択的かどうか)
やること、やらないことが明確になっているか
・Sufficient(十分かどうか)
投入すると決めた経営資源がその戦局での勝利に十分かどうか
・Sustenable(継続可能かどうか)
短期的ではなく中長期で維持継続できるか
・Synchronized(自社の特徴との整合性)
自社の強み、弱みまたは経営資源の特徴を有利に活用できているか
※実際には全てにOKということは滅多に無いため、あくまで判断の基準として活用する
マーケティングのフレームワーク
フレームワークは、整合性のある戦略と戦術を生み出しやすくなる型のこと。
全体像は、戦況分析(市場理解、消費者理解、競合理解、経営資源の理解など)→目的設定→WHO→WHAT→HOWである。
・戦況分析
市場構造を理解して、それを味方に付けるために行う。
5C分析‥以下の5つに着眼すること。
Company‥自社の全体戦略の理解、自社の使いうる経営資源を出来るだけ多く把握する、自社の強みと弱みの把握
Consumer‥消費者を量的(全体の傾向)、質的(深層心理)に理解する。
Customer(流通などの中間顧客)‥着眼ポイントはCompanyをほぼ同じ。
Competitor‥広義における競合理解まで行う。USJで言えば可処分時間の奪い合いでスマホも競合と言える。自社が提供している価値を把握することで着眼すべき競合が見えてくる。
Community‥PESTのフレームワークに代表されるような外部環境のこと。自社でコントロールする事が難しいため、ドライバーを把握し動向をモニターする事が重要。
・目的の設定
重要な点は以下の3点。
実現可能性‥高すぎず低すぎずという条件を満たすもの
シンプルさ‥限りなくシンプルで明確な目的に設定する
魅力的かどうか‥定性的にモチベーションを向上させられると、人的資源を激増する事ができる
・WHO(誰に売るのか)
前提として、全ての人を喜ばせることは不可能です。
戦略ターゲットとコアターゲットの2つを定める。
戦略ターゲット‥マーケティング予算を投下する最も大きなくくりのこと。この外にいる消費者は捨てます。
コアターゲット‥戦略ターゲット内の、更に予算を集中投下する対象です。ブランドを購入する必然性が高いグループ層です。
コアターゲットを選定したら、消費者インサイトを探る。
消費者インサイト‥消費者の隠された真実、深い深層心理のことで、基本的には指摘されてもそうだねとはなりません。
マインドオープニングインサイト‥理性をはっとさせるもの。例えばアリエールで、「部屋干しするから衣類から匂いがするのは衣服にたくさんの菌がいるから」というインサイト。
ハートオープニングインサイト‥感情をエグるインサイトで、USJの場合、クリスマスに娘はすぐに大きくなって、すぐに一緒に過ごさなくなります、というインサイトを付いたプロモーションを実施しました。
・WHAT(何を売るか)
消費者価値を選ぶ=ベネフィット、お金を払ってブランドを買う理由。
USJではアトラクションやイベントではなく、感情がWHATになり、アトラクションはHOWになります。
例えばフェラーリでは「成功者としてのステータス、優越感」
重要なブランドエクイティを作るためにはポジショニング、つまり消費者の中の頭の中の想定的な想起イメージを作ること。
・HOW(どうやって売るか)
つまり戦術のことで、基本的に消費者の目に触れるものは全てHOWに当たる。
マーケティングミックス(4P)‥以下4つを決めるフレームワーク
プロダクト‥WHATをどのように製品機能に落としていくか。
プライス‥消費者需要や価格弾力性、競合の是非によって可変する。
プレイス‥どこで消費者に買ってもらう事ができるのか。
プロモーション‥決めたターゲットにリーチする媒体、メディアとその運用方法を決める。
これ以降はマーケターへの向き不向きや、独自のキャリアの築き方の理論などを、キャリアに関する記述をされていますので、興味がある方はぜひ読んでみてください!
USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門のレビュー
一見USJを成功させた自叙伝のようなタイトルですが、決してそうではなく、あくまでUSJを例に取ったマーケティングの基本的な全体像と実践方法を紹介されています。
私自身マーケターとして活動していますが、自分自身の中にあるぼんやりとしたマーケティング戦略の全体像を理解させてくれました。
ただし細かい戦術部分であったり、戦略の決定部分などについての具体的なフレームワークなどはあまり記載がありません。(入門書と本著の中でも言われているので、あえてですが)
そのためあくまでもマーケティングの全体像を把握する、という目的であれば本当におすすめの一冊になっているので、もしそれ以上を勉強したい!と思われた際にはぜひおすすめのwebマーケティングの本から次に進んでみてください。