起業やスタートアップにとっての教科書として定着した「起業の科学」。
私自身も愛読書としてサービス開発の際には常に参考にしていますが、如何せんボリューミィで内容がかなり濃ゆいです‥!!
そこで実践する際に必要な要点に絞って活用方法を解説していきます!
各フェーズごとに実際に実践しみたことを記事化しています。興味ある方は#1からぜひご覧ください!
「起業の科学 スタートアップサイエンス」とは
スタートアップではスタンダードになっている「起業の科学」は、2017年に起業家である田所雅之氏によって制作されました。
自身の経験から起業家が必ず直面する課題と対策をまとめたもので、スライド集は全世界で約5万回シェアと大きな反響を呼びました!
アイデアを出す際の原理原則からスケールさせるまでの一連の流れが、このように網羅的に解説されています。
スライド集は公開されています
2021年現在も、反響を呼んだ全スライドは公開されています。
https://masatadokoro.medium.com/https-medium-com-masatadokoro-startup-science-2018-5228111b275f
ただしテキストによる解説は記載が無いので、詳細を知りたい方には本をお勧めします。
起業の科学の入門編もあります
内容がかなり重いフィードバックが多かったためか、2019年にPMF(Product Market Fit)までに絞った入門編も発売されました。
起業の科学本体の大きさはA4サイズほどでかなり大きく携帯には不便ですが、入門編は一般的なビジネス書のサイズなので、サービスを作り出す部分までを参考にしたい方はまずはこちらを参考にすると良いと思います。
起業の科学を活用するメリット
メリットは以下の2点です。
失敗を避けることができる
私もそうでしたが、未経験からサービスを考えようとするとプロダクトアウトになりがちです。
具体的には、こんなのあったら良いよねという出発点からサービスを作り始めるものの、結果として誰も使わないサービスになってしまう可能性があります。
そうした失敗を避けることができます。
確実に前に進むことが出来る
1つ1つ実践することで確実に前に進み、成功まで進むことができます。
少なくとも何をしたら良いかという状態にはならないため、悩むことも無いです。
起業の科学のデメリット
デメリットは、やってみると面倒で意外と難しいということです。
あくまでも方法論を伝えているため、例えば実際にインタビュー相手をどうやって探そう?などといった場合、結構詰まります。
全ての状況や業界に対しての解決策が記されているわけでは無いので、やり切るための覚悟が必要になってきます。(が、スタートアップとしてやっていくためには避けては通れないです。)
起業の科学の5ステップの活用法
それでは早速要点を解説していきます。ステップは大きく以下の5つあるので、それぞれ解説していきます。(今回はPMF部分までの解説を行います。)
- アイデアの検証(Idea Verification)
- 課題の質を上げる(Customer Problem Fit)
- ソリューションの検証(Problem Solution Fit)
- 人が欲しがるものを作る(Product Market Fit)
- スケールさせる(Transition To Scale)
アイデアの検証(Idea Verification)
まずはどんな事業・サービスを行うのかアイデア出しです。
アイデア出し
まず初めに行うことはアイデア出しです。
本書では詳細なアイデア出しの方法は記載がありませんが、アイデア出しの一般的な正攻法としてはブレインストーミングです。(どんなアイデアも否定せず、ひたすら意見を出す)
切り口は例えばPEST分析を行なったり、自分自身の日頃感じている課題を解決するものなど無限にあり、正解の方法は無いので思い付く限りアイデアを出すことが大切です。
アイデアの検証
アイデアを出した後は、以下のチェックポイントでアイデアを検証します。
この7つのチェックポイントに当てはまるアイデアはスタートアップが避けるべきアイデアです。
- 誰が見ても、最初から良いアイデアに見えるもの
- ニッチすぎる(将来的な成長が見込めない領域は×)
- 自分が欲しいものではなく作れるものを作る
- 根拠の無い想像上の課題
- 分析から生まれたアイデア(自分自身が課題に感じることが重要)
- 激しい競争に切り込むアイデア
- 一言(誰の何をどう解決するか)では表せないアイデア
プランAの作成
アイデアを検証した後は、リーンキャンバスを用いてプランAを作成します。
課題の質を上げる(Customer Problem Fit)
前章で作り上げた仮説はあくまで作り手が考えたものであるため、実際にユーザーとの対話で検証していきます。
ペルソナの作成
課題を発見するためにユーザーの具体像を作成します。
この例の項目を参考に詳しく作成していきます。
ちなみに、ペルソナの有効性や成功事例として個人的にはスープストック東京がかなりお勧めなので、下記も参考にしてみてください。
ペルソナの作成に合わせて、以下の項目も追加します。
- 何を課題(不満、不便、不安)に感じているか
- 何を達成したいのか
- インサイトを探る(本音では例えば承認欲求を求めているなど)
最後に、エンパシーマップも作成します。これでユーザーを詳細に理解できます。
カスタマージャーニーの作成
マーケティングで頻出のカスタマージャーニーを使うことで、ユーザーのストーリーを理解でき、より鮮明に課題が見えてきます。
項目としては以下の6つです。
- 特定の行動についてのステップ
- 各ステップ内の詳細な行動
- 行動の裏にある思考
- タッチポイント(接点)
- 感情の浮き沈み
- 現場の課題点
ジャベリンボードの作成
カスタマージャーニーを作成すると複数の課題仮説が出てくるが、その妥当性を検証するためにジャベリンボードというツールを使用する。
カスタマージャーニーから見えてきた以下の項目をまずはブレストします。
- カスタマーは誰か
- 課題は何か
- ソリューションは何か
- 前提条件は何か
その後、検証方法・検証基準を決め、それらを以下のようにシートにまとめます。
課題〜前提の検証
ジャベリンボードで出した項目について実際にユーザーにインタビューを行います。
ポイントは、課題に注力して質問をすることです。
インタビューを複数回行った後、KJ法でまとめます。具体的には、インタビューデータを細かい単位に分けて書き出し、関連性を論理的に整理します。
ジャベリンボードに結果と学びを書くことを繰り返していきます。
かなり面倒な作業だからこそ、ここで差が生まれます。基本的には1つの課題に対して20人以上に聞くことが推奨されています。
ソリューションの検証(Problem Solution Fit)
痛みを感じる課題の検証ができたら、どういうソリューション(解決策)を用意すべきか検討します。
カンバンボードを作成する
以下のように、カンバンボードを作成します。
これまで検証してきた課題を一番左に書き、そのための価値提案とソリューションの仮説を作成します。(ツール内の「バックログフューチャー」が対象)
ソリューションインタビューを実施する
ソリューションをリストアップしたら、実際にユーザーに質問します。
気を付けるべき点や質問項目は以下の通りです。
- 課題インタビューでユーザーになり得ると感じたユーザーに聞く
- 課題を解決するための魔法のランプがあったらどんなものが欲しいか
- 魔法のランプに含まれる機能や代替案や近いものはあるか
- 代替案の良い点と不足している点は何か
- 魔法のランプにどのくらいの予算を確保できるか
インタビュー終了後、機能に優先度をつけます。具体的には以下の3つに分ける。
- Must Have
- Nice To Have
- Don’t Need
ここで新たに出てきた機能があればカンバンボードに追加します。
UXブループリントを作成する
機能を構造化し、画面遷移に落とし込みます。
プロトタイプの構築
まずは紙に書き出したペーパープロトを作成する。
ペーパープロトでユーザーのストーリーが固まってきたら、ユーザーからのフィードバックをもらうために簡単に動くツールプロトを作成します。
プロダクトインタビューの実施
これまでのインタビューと同じようにユーザーにインタビューを行います。
質問リストとしては以下の通りです。
- これは何をするものだと思いますか?
- 今、何をしようとしていますか?
- あなたはXXXという文言をどう解釈しますか?
- XXXというボタンは何をするものだと思いますか?
- 次は、何をしますか?
- XXXボタンを押したら期待通りに動きましたか?
- 期待通りでないなら、どのように動くと想定しましたか?
これまでのPSFの流れを何回も繰り返しカンバンボードを更新し、ユーザーがスムーズにゴールまで辿り着き、今すぐにこれが欲しいと反応があるまで改善を繰り返すことで成功確度が上昇します。
人が欲しがるものを作る(Product Market Fit)
いよいよ製品を投入していきます。ここで作成する製品はMVP(必要最低限の機能を備えたプロダクト)です。
スプリントカンバンボードの作成
まずユーザーストーリーを洗い出し、スプリントカンバンボードを作成します。
MVPをカスタマーに届ける
ユーザーの反応を得るための実験の準備ができたら、MVPをカスタマーに届けます。
前提として、世に出すのは恥ずかしいレベルのものでないとそれはローンチのタイミングとしては遅いです。
より多く学ぶことが重要になるため、いち早く世に出すことが重要です。
MVPの評価を計測する
MVPを世に出したら、定量・定性の両軸で評価していきます。
定量評価
定量評価には「AARRR指標」を使用します。
入り口からゴールまで想定通りにユーザーが動かない場合、穴の空いたバケツに水を注ぐことになるため、AARRR指標を活用しボトルネックを改善していくことでPMFに近付きます。
各段階でKPIを設け、上記のように計測していきます。
定性評価
カスタマーインタビューによる学びを得ます。
具体的な質問項目は以下の通りです。
- このプロダクトを使って価値を感じましたか?
- 最も価値を感じた機能のtop3はなんですか?
- なぜそれらの機能に価値を感じましたか?
- 使わなかった機能、価値を感じなかった機能はなんですか?
- それは何故ですか?
- このプロダクトを家族や友人に勧めますか?
こうしたスプリントを繰り返しつつ、UXの改善も繰り返すことでPMFが達成されます。
まとめ
起業の科学の具体的な活用方法を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
もっと詳細に知りたいなどがあればぜひ書籍の方でもチェックしてみてください。