LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは?
LTVとは、「Life Time Value」の略称で、日本語では顧客生涯価値と呼ばれています。
顧客と取引を開始してから終了するまでの期間に、どのくらい商品やサービスを利用して収益をもたらすのかをトータルしたものです。
一般的には顧客ロイヤリティが高いほどLTVも高まります。
LTVが注目されるようになった背景
LTVが注目されるようになった背景として、新規顧客獲得の難しさから既存顧客を維持する方が収益性の改善に繋がると考えられるようになったからです。
「1:5の法則」にもあるように新規顧客獲得のコストは既存顧客維持の5倍と言われております。
一度関係を築いた顧客と良好な関係性を維持することで、継続的に商品やサービスを利用してもらえるので収益が見込みやすくなります。
LTVが注目される主な理由としては以下の3つになります。
- CRMとの親和性が高い
- サブスクリプション型ビジネスの流行
- SaaSの流行
それぞれ解説していきます。
CRMとの親和性が高い
新規顧客を取得するのはコストも掛かり、大変な作業になります。
また、1度顧客が離れてしまうと再度獲得するのも至難の業です。
そのため、顧客となった方と良好な関係を維持していくためにも、データ分析や一元管理できるCRMを利用して既存顧客との関係作りを効率的に行う必要があるのです。
LTVは利益と時間という定量的な指標なので、既存顧客との関係性がどのような状態か見極める上でも注目を集めています。
サブスクリプション型ビジネスの流行
近年、消費者の動向が「モノ」から「コト」へシフトしてきており、サブスクリプションビジネスの市場規模が拡大してきています。
消費者にとっては、必要な期間だけ安く商品やサービスを利用することができます。
一方、企業にとっては顧客のリストやデータを収集し、継続的に利益を見込めるビジネスモデルです。
また、モノを購入するよりは消費者の心理的なハードルが低くなる傾向があるため、新規顧客を獲得しやすくなります。
サブスクリプションモデルが重要としているのが「いかに顧客の満足度を高め、継続的に使ってもらうか」です。
そこで、LTVが注目されているのです。
SaaSの流行
SaaSの流行によってもLTVが重要視されてきました。
SaaSとは、Software as a Serviceの略で。インターネットを通じてクラウド上で利用できる形態のサービスで、市場規模が急成長しており、2024年には1兆1200億円になると予想されています。
SaaS型のビジネスモデルを取ることで、より多くの顧客にサービスを提供することできるようになるため、多くの事業がSaaS型に切り替わってきています。
SaaS型のビジネスはサブスクリプション型のビジネスと相性が良いため、SaaSの台頭によってサブスクリプションが広まり、それによってもLTVが注目されています。
LTVの計算方法
代表的なLTVの算出方法は以下の3つです。
- LTV=1顧客の年間取引額×1顧客の継続年数
- LTV=全顧客の平均購入単価×平均購入回数
- LTV=(売上高―売上原価)÷購入数
ビジネスモデルによって、使い分けていくのがポイントです。
通販やメーカー、小売業などの場合
計算式は以下の通りです。
LTV=「平均注文単価×年間利用回数×平均利用年数」で求められます。
例えば、ネットショップで販売している商品で、約60日間で使い切るものだった場合、購入の頻度は約6回になります。
さらに、1年間の間にその商品を使わなくなる人の割合が10%だった場合、使い続けてくれる期間は約10年ということです。
LTVを高めるには、リピート購入をしてもらえる工夫をして顧客との関係性作りが重要です。
SaaSの場合
計算式は以下の通りです。
「月額の料金(MRR)×使い続けてくれる期間」で求められます。
サブスクリプションビジネスでは顧客の利用データを取りやすいので、LTVを比較的正確に算出しやすいです。
使い続けてくれる期間は、Churn Rate(チャーンレート:解約率)から算出することができます。
例えば、あるSaaSプロダクトで、月次課金額が3000円、契約期間が28ヶ月だとすると、「LTV = 3,000 × 28= 8,4000(円)」となります。
CACという概念について
LTVと深く関わりのある指標に「CAC」という概念があります。
CACとは、「顧客獲得費用」の意味で特にSaaS型のビジネスで用いられる指標の1つです。
CAC=「顧客獲得コスト÷顧客数」で求められます。
LTVとCACの関係性
LTVとCACを用いて、サービス・製品の販売で実際に利益を出せているのかを確認できます。
LTV÷CACが1よりも小さいと、売れば売るほど赤字が出ている状態だと判断できます。
一方、一般的にビジネスとして健全に収益を上げられている状態はLTV÷CACが3以上の時とされています。
LTVを最大化する方法
LTVを最大化するための方法として、以下の5つの対策が有効になります。
1.平均顧客単価を上げる
製品の購入やサービスを利用するときの顧客単価が上がれば、必然的にLTVの数値が改善されます。
平均顧客単価を向上させる具体的な施策は以下の3つです
商品の値上げ
1つ目の方法は、商品の価格を上げることです。
ただし、顧客が値上げを受け入れてくれなければ、既存顧客が離れる危険性もあります。
値上げ後も継続して利用してもらえるよう、顧客にマッチした魅力的な製品やサービスを開発することが重要になります。
複数の商品バリエーションの用意
2つ目の方法は商品やサービスのバリエーションを増やすことです。
複数の商品を用意することで、商品購入数分顧客の単価が増えることになります。
セット販売
3つ目は、商品を単品ではなくセットで販売することです。
同時購入されることが多い商品をあらかじめセット商品にすることで、顧客が複数の商品を購入しやすくなります。
2.購入頻度を上げる
購入頻度を上げるには、データ収集や分析を行い、顧客のニーズを満たす提案をするのが重要となります。
たとえ新規顧客が開拓できなくても、既存顧客の利用頻度を上げれば、利益をアップさせられます。
また、既存顧客のリピート率を上げることで、LTVの値を高めることも可能です。
3.継続期間を伸ばす・チャーンレートを下げる
顧客との関係をより長く続けるためには、継続して自社サービスを利用してもらう必要があります。
そのためにも、顧客のニーズを満たす商品やサービスを提案していくことが大切ですね。
また、解約率が高いままでは、コストをかけて新規顧客を獲得しても収益は悪化します。チャーンレートの改善も重要で、まず解約理由を明確にすることが大切です。
4.新規顧客獲得コスト・既存顧客維持コストの削減
顧客にかかるコストには、新規の顧客を獲得する時、既存の顧客を維持する時に掛かります。
それぞれを分析し、コストを抑え、別のリソースにコストを割くことでLTVを最大化できます。
5.収益性を高める
どれだけたくさんの商品が売れても、収益率が低いままでは大きな利益を出すことはできません。
原価率が高ければ、収益率も低くなります。
原価を抑える
収益率を上げるための手段の1つとして、原価をできるだけ安く抑えることが大切です。
原価は「材料費」「労務費」「経費」の3つの要素で決まります。
原価を抑える材料や仕入方法を考えることが重要です。
また、業務の効率化を図るのも、原価を抑えることにつながります。
CRM(顧客関係性維持システム)の活用によるカスタマーサクセスが重要
LTVが重要視されるようになり、CRMも注目されてきています。
顧客の行動やニーズなどをデータとして蓄積・一元管理し、共有できるため、企業全体で顧客の情報を可視化でき、最適な関係性作りに役立てることができます。
継続して利用・購入してくれるLTVの高い優良顧客のパターンを分析すれば、さらに効率の良いマーケティング活動ができるのです。