
広告代理店・事業会社、両方を経験したからこそ伝えられるそれぞれにおけるwebマーケティングの考え方をお伝えします。



広告代理店にお勤めの方はクライアント(事業会社)の、事業会社にお勤めの方は広告代理店の目線を知っていただくことで、それぞれの付き合い方が変わるかと思います。広告、特にwebマーケティングに関わろうと思っている方にもぜひ読んでいただけますと幸いです。
2社間の違いは、歩留まりを見るかどうか
最も大きな違いは、「歩留まりまで見るかどうか」です。歩留まりって何?って方もいらっしゃるかと思うので、そもそもwebマーケティングの全体像から見てみたいと思います。
そもそも、webマーケティングの全体像
まず、マーケターの業務の流れは以下の通りになります。


①ユーザーの認知獲得、webサイト誘導


まずはユーザーにサービスを知ってもらわないことには話になりません。または、すでに知っているユーザーに対しても、行動を促すためにはサイトに遷移してもらうなど、ユーザーに対してアプローチする必要があります。
ここで広告などを使用して、例えば以下のような手法を使います。
- webサイト内に表示されるバナー(ディスプレイ)広告
- メールやLINEを使用したメルマガ
- 検索結果に出てくるリスティング広告
- SNS投稿でフォロワーアプローチ
②申し込みなどの行動、CV


次に、webサイトに誘導したユーザーに、行動を起こしてもらう必要あります。この行動のことをCV(コンバージョン)と呼び、例えば「申し込み」や「資料請求」、通販サイト(EC)の場合には「購入」などを指します。
広告の着地用のページをランディングページと呼び、改善するための行動をLPOと呼んだり、フォームページの成果改善の行動をEFOと呼んだりします。
③MQL(スクリーニング)後、営業へリードのパス


webサイト上でCVしたユーザーを営業へ渡し、クロージングに向かいますが、ひたすら全てのユーザーを渡すと、ユーザーの中にもいくつかランクがあるので、効率が悪くなってしまいます。例えば人材系の事業を行っていて、
- 資格を持ってる若いユーザー
- 資格を持っていない少し高齢のユーザー
上記のような場合、売上や成約率に差が出ることは直感的にもわかると思います。こうしたランクをユーザーに対して付け、それに基づきフィルターを作成し、その基準に合致するユーザーのみをスクリーニングし、営業へパスします。この営業に渡されるリードをMQL(マーケティングクオリファイドリード)と呼びます。
私も実際人材系の事業を扱っておりましたが、数段階にユーザーを分解し、それぞれに目標の獲得単価を設定し、それをKPIとして追っていました。
④営業へパスしたリードとの成約・契約


最後ですね。営業にパスした確度の高いリードを、営業に成約に繋げてもらいます。これでユーザー獲得〜成約までの一連の流れです。
歩留まりとは?
一連の流れを見てきましたが、歩留まりとはなんでしょうか?それは、以下のようにCV後の流れ(成果)のことを指します。


つまり広告代理店と事業会社(インハウス)マーケターのwebマーケティングの違いは、歩留まりまで見るか=「CVまでを重視するか、それ以降までも重視するか」と言うことです。
広告代理店の社内ではCPA(コンバージョンあたりの単価)が最重要視されていますが、事業会社の中でCPAと言う言葉はほとんど聞くことはありません。MQLあたりの単価を追っていたり、事業ドメインごとに異なるユニークな指標をKPIとして追っているため、同じwebマーケティングでも業務内容は一切違うのです。
同じマーケティングでも、なぜ視点が違ってくるのか
こうした視点の違いは、仕事内容の違いにより起こります。
そもそも広告代理店は事業会社が存在しないと存在意義が無く、事業会社からしても広告代理店に高いfeeを払わなくて済むなら払わないに越したことがありません。


しかし、現実にはそうもいきません。歩留まりの改善だけでもかなりの労力が掛かるのですが、CVまでの改善や管理もかなりの労力が掛かります。
例えばwebの広告を出すだけでも、選択肢は多岐に渡ります。SNS系のFacebook、インスタグラム、Twitter、LINEなどから、GoogleやYahoo!や、細かい各メディアまで多岐に渡り、1つ1つの媒体に合った形のクリエイティブ(バナーなど)を作成し、PDCAを回さなければなりません。
そのためリソースを賄うためにどこかを外部に切り出す必要が出てくるのですが、以下の理由から歩留まりを切り出すことは難しいのです。
- クロージングのためには商材理解が必要
- ユーザーデータなどの機密情報を扱う
一方で、CVまでの流れは比較的上記の要素が少なく、かつ以下のメリットがあります。
- 複数クライアントを扱うことで、各広告媒体や手法の汎用化されたノウハウが溜まりやすい
- Web上で完結可能なため、横展開可能
上記理由により、CVまでの流れが代理店に渡りやすいのです。


ただし、あくまで代理業であり、成約を売り上げとしてる事業会社と比較すると、利益率が低くなりがちかつ扱う金額も少なくなりがちです。
そのため、広告代理店は薄利多売(多くのクライアントを持つこと)になり、歩留まりに目を向けることがなくなるのです。実際、私も代理店時代歩留まりの話は社内でしたところでぽかんとされた記憶があります。
どちらの視点も持つことで、成果が最大化出来る
ここまで、広告代理店と事業会社の視点と違いと、そうなる背景についてお話ししてきましたが、どちらが良い悪いということではありません。
代理店はCVまでの成果を最大化することが期待されているので、CVをゴールとして成果改善していくことは悪いことではないのです。あくまで役割の違いですが、経験上、CV・歩留まりどちらの改善も視点としては持つべきです。
例えば代理店において歩留まりの話が出来る・理解していると、事業会社側からすると嬉しいですし、提案にも深みが出て評価もされやすいかと思います。
事業会社においても、CVに至るまで、つまり広告媒体や手法に寄り添って代理店側の話を聞くと、共通言語が出来るため、全体の改善に繋がりやすくなります。
ぜひ何かの参考になりましたら幸いです。




また、事業会社・広告代理店両方で経験を積んだスキルを活かして広告運用の受託事業も行っております。
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