今回は、「コトラーのマーケティング4.0」の要約とレビューをお伝えしていきます。
やや高度なため、もっとカスタマージャーニーを使いこなしたいなどの思考のある、経験のあるマーケター向けの本になっています。
コトラーのマーケティング4.0の要約
環境の変化
今の時代は的を絞った広告キャンペーンよりもブランドに関する取り留めのないカンバセーションの方が信用できる。
ほとんどの顧客が広告や専門家よりもソーシャルメディア上で見知らぬ人たちにアドバイスを求めるようになっており、つまりブランドと顧客の関係は縦ではなく横になっている。
新しいタイプの顧客の登場
モバイルを使うことによりどこでも購買決定を下すことができ、インターネットを自在に使いこなすにも関わらず物事を実際に体験することを好む。
彼らは企業やブランドよりも友達や家族のネットワークを信頼している、つまり接続性が高い。
接続性はインターネットとの接続性はもちろん、経験の接続性、ソーシャルの接続性(顧客コミュニティ)まで意識する必要がある。
新しいタイプの顧客の登場からも見て取れるように、オンラインとオフラインの世界は共存し、融合することになる。NFCや位置情報に基づくビーコンなどのセンサー技術はこれまでより遥かに魅力的な顧客経験を可能にする。
デジタル時代における3つの主要セグメント
大切になってきている推奨を得るためにYWN(若者、女性、ネティズン)に注力すべきである。
若者について
世界の人口統計的にはかなりの数を占めているため規模が大きいかつアーリーアダプター、トレンドセッター、ゲームチェンジャーであるため、顧客のマインドに影響を与えたいのであればまず若者を取り込むべきである。
女性について
男性が直線的に判断するのに対し、女性は螺旋状に情報を収集し判断する情報収集者であるため、カンバセーションが多い。また家庭の財布の紐も握っている。つまり市場シェアを獲得するための鍵である。
ネティズンについて
ネティズン=「地理的境界を超えて、より大きい世界の利益のためにインターネットを発展させることを気にかけ、そのために積極的に活動する人々」
常に繋がっていて貢献したいという欲求があり、コンテンツ投稿者でもある。
デジタル時代においては、これら3つのセグメントを併せたターゲットが有効になる。
マーケティング4.0について
マーケティング4.0とは、企業と顧客のオンライン交流とオフライン交流を一体化させるマーケティングアプローチである。
従来の4Pは4Cに置き換えられるべきである。(共創、通貨、共同活性化、カンバセーション)
伝統的な4PやSTPなどをデジタル時代のマーケティングに置き換えるのではなく、カスタマージャーニーによっては統合する必要がある。
伝統的なマーケティングはいわゆる戦略部分。
新しいカスタマージャーニー
広く使われている「AIDA」→修正版の「4A(認知、態度、行動、再行動)」
4Aは漏斗のような直線的なプロセスを表すが、接続性のよってカスタマージャーニーは再定義されるべきである。
接続性以前は顧客個人が自分の態度を決めていたが、現代は個人的に見える多くの決定が事実上社会的な決定である。
例えばロイヤリティがあれば、購入せずとも推奨してくれるかもしれない。
上記を考慮すると、新しいカスタマージャーニーは「5A(認知、訴求、調査、行動、推奨)」であるべき
必ずしも直線的はなく、螺旋状になることもあるし(戻ったり)、段階を飛ばすこともある。
測定指標について
5Aに則ると、測定する価値のある指標は以下の2つ。
※前提、市場の人数を測っておくことが大切。
購買行動率(PAR)
認知→行動へのコンバート率
ブランド推奨率(BAR)
認知から推奨へのコンバート率
重要なことは、認知〜推奨までの各段階におけるコンバージョン率を測定すること。なぜなら、それはボトルネックを意味し、どこに介入すべきかを正確に把握できるから。
産業別に、以下の4つのパターンに分けることができる。
それぞれに長所と短所があるため、理想的なカスタマージャーニーは、左右対称の蝶ネクタイ型のカスタマージャーニーである。
4つの主要パターンを蝶ネクタイ型に重ね合わせると、両者の差異がと改善チャンスが明らかになる。
BARの値(中央値と幅)によっても4つに産業を分割することができる。
人間中心のマーケティング
デジタル時代においても、人間中心のマーケティングはブランドの魅力を高める鍵になる。
人間的性格を持つブランドが最も差別化になる。
目的は顧客の潜在的な不安や欲求などを知ることだが、そのためには共感的傾聴やデジタル人類学などの没入型調査が必要となる。
デジタル人類学の主要な方法は以下の2つ
ソーシャルリスニング
SNSなどでブランドについてどのように語られているのかモニターする方法。
大量のソーシャルカンバセーションをソフトなどを使ってフィルターにかけ、分析する
ネトノグラフィー
オンラインコミュニティに能動的に参加する方法。
ソーシャルリスニングはソフトを使用して自動的にデータを構成するのに対して、こちらは自らの深い洞察を統合する必要がある
↑は顧客の人間性の理解だが、ブランド側も人間性を公にすることが重要で、人間性とは以下の6つによって構成されている
- 身体的魅力‥ロゴデザインやタグラインなど
- 知性‥イノベーションを起こした革新的なアイデア
- 社交性‥顧客とのカンバセーション
- 感情性‥感情に訴えるメッセージ
- パーソナビリティ‥自らの存在理由を知り、欠点を見せることを恐れない
- 道徳性‥倫理的で強い誠実さを持っていること
オムニチャネルマーケティング
ショールーミングやウェブルーミングに見られるように、オムニチャネルマーケティングとは様々なチャネルを統合してシームレスで一貫性のある顧客経験を生み出すこと。
例えばビーコン技術を使用して顧客が小売店のどの売り場を訪れているのかを分析し、さらには店内のどこにいるかによってパーソナライズされたオファーを送ることができる。
コトラーのマーケティング4.0のレビュー
個人的にはかなり納得感のある内容でしたが、結構高度な内容であり、前提知識が必要だなとも感じました。
伝統的なカスタマージャーニーを使ってマーケティングを行なっていましたが、これ通りに行かない人の方が多いよな?と感じていた自分の疑問点を見事に払拭してくれ、確かにここに記載されている方法で計測・設計すれば合理的であると感じたので、伝統的なマーケティングから、現代の消費者行動に合わせたマーケティングに移行する必要性を感じている方にはうってつけの本です。
また、消費者とのタッチポイントが増えることにより今後はよりブランディングが重要になることも感じたため、改めてブランディングについても考え直したいなと思わされました。